これからのON

 どこの塾さまの場合でも同じことと思いますが…。

 塾を経営されている先生方は何らかの得意分野があって,それを売りにしていらっしゃることが多いと思います。これはほかには負けない!と自負されていると,私が勝手に思っているだけでしょうか…。

 最近特に思います。どの塾で勉強するのかって実はどうでもいいのではないかと。どれだけ一流の先生が指導しても伸びない子は伸びないし,最終的に生徒をつぶすこともあります。しかし若い先生(学生のアルバイト含む)が思わぬ成果を上げることもあります。塾は本当に生徒と講師の相性が大事だと思います。

 どの塾に行っても変わらない(しつこくてすみません)と思うのです。勉強は「誰と一緒にやるか・どんな課題にぶつかるか」。これに尽きると思います。

 「この人と一緒に勉強したい」と思える人を見つける,可能であれば育てる。これが塾の大事な仕事なのではないかと思うようになりました。塾って意外と「いい加減」にやっていてもうまくいってしまうことがあります。

 きめ細かくやるとか,できない子を親身に面倒を見るとか,できる子に一生懸命実績をつくってもらうとか,そういうのって案外,的外れなんじゃないかな。だからといってONが「面倒見が悪い塾」になるというわけではないのですが…。

 ここからは授業で与える教材の話が主になります。一緒に勉強する仲間が違えば当然実績が違います。これは私が浪人時代を過ごした某予備学校のキャッチフレーズにもなっています。

 教師は生徒の梯子になる。これは私の信条です。生徒たちが自分を乗り越えていってなんぼだと思います。仲間と協力して,時には競争をして成長していくのです。そのうちに誰かが頭一歩抜け出します。その子に負けまいと周りの子が頑張ります。そして正の連鎖が続きます。これまでのONゼミナールの好調時はすべてとはいいませんがそんな時代が長かったと思います。

 教師は生徒が伸び伸びと成長できるように適切な教材を与え,学ぶきっかけを与えれば十分なのでないかと思うのです。

 津に来はじめた20年ほど前の私はそんなことが分からず,毎晩のように先代経営者のO先生に夜中の2時,3時に電話で叱られたものです。時間を考えてよって思いながらお説教を聞いていました。

 丁寧に教える,分かりやすく教える,きちんとしたプリント教材をつくる,目線や声の調整,立ち位置…一斉授業をする際に気を付けないといけないとされることは20数項目あるにはあります。でも,とりあえず津で教えるうえではこれはどうでもいい

 『生徒が「これはできない」「自分では無理」と思える問題をどんどんやらせれば生徒はどんどん増える。今の先生(現塾長)の授業は分かりやすいだけで,生徒たちが「こんなレベルなら自分でもできる」って言っているよ!』O先生からのお叱りでした。

 その後もレベルが低い授業をして生徒にそっぽを向かれてしまうことが数回ありましたが,5年くらいこちらでやっているうちに化学のみで一学年10人以上集まるようになりました。添削を毎週やるなど,大変なこともありましたが,他に私がやっていたことは「ちょっとの基本問題」と「差がつく問題」,「おっ,となるような難しい問題」。これで生徒は集まりました。たまーに体験に来た子に超基本問題ばかりやってもらってみたら,「ごめんなさい」って言われたときにすこし確信に近づきました。この子たちは「こりゃやばい,勉強しなきゃ」と思えるきっかけを作ってあげないと塾に来る意味を見出さない。

 先代が世を去り数学や物理を教え始めてから,化学でもこの2教科でも試行錯誤しました。だんだん生徒の学力が下がってきています。それなのにむかしのレベルの問題ばかり出して大丈夫か。他の先生に担当して頂いたりもしました。結果は大失敗。これは方針を決めたものの責任です。先生方の責任にはできません。全部私が悪い。前と変わらない指導を続けていれば,今の塾の惨状(人数的に,というだけの意味で)はなかったはずです。私はO先生の方針を踏襲して指導していれば,ONは一定の支持を頂けていたかもしれません。今の苦労はすべて私はつくりだしたものです。ざまあみろ,自分。

 最近の生徒を見くびっていたのかもしれません。一見,これまでと違う感じの生徒が増えてきて,急に先代がなくなって塾を継ぐこととなりほかの方の力を借りたくなってしまいました。無理を聞いていただいた数学の先生方お二人が,生徒のためを思っていろいろ工夫して下さったのは容易に想像がつきます。大変なご苦労をおかけしてしまいました。でもその努力は実らなかった。私が5年かかったのです。絶対的な指導者O先生がいる時でさえ。

 半年ほど前に決めました。10年くらいは理系教科すべてを私が指導します。少なくとも高校生以上は。具体的には申し上げられませんが,あるいは塾の指導形態をかなり大掛かりにいじるかもしれません。私と英語の先生できちんとできるような形で,継続的にきちんと利益が出る形であればどうなってもいいと思っています。

 少し話が脱線しました。もとの筋に戻しましょう。生徒にどんなきっかけをあげるか。時代は変わっても同じなのではないかと思います。もちろんそれについてこられないこと相当数出てきますが,それは昔もそうでした。生徒の面倒をきちんと見たいのは昔も今も同じです。しかし,ついてこない生徒のことをいつまでも気にかけていられない。こちらの気持ちがもたないです。それだけエネルギーを掛けて指導しています。生徒のやる気をエネルギーにして出ないと授業が「もちません」。難しくても,今は付いていけなくても,「なにくそ」とついてくる生徒には満足してもらわなければなりません。指導の敷居を下げてはいけないと思っています。

 どんな学校の子でもそうですが,自分の力以上の問題を見せられて「勉強したい」と思えるきっかけを上げることが一番大事だと思います。生徒を煽るというのとは違います。「何これ,分からない。分かりたい,もっと知りたい」と思える問題を一つでも多く紹介してあげるのです。中には問題に手も足も出ず青い顔をして帰っていって,その次以降来なくなった体験生もいました。でも,しょうがなかったのです。仮にその子が入ってくれても,ONはその子の役に立てないかも知れない。難しいけれど,自分の志望校に受かるためには必要なのだ,と思える人でないとなかなか第一志望校には受かりません。それと,従来の受講生のレベルに合わせて授業をするので,新しい子に合わせていては前からいた子の迷惑になる。

 これは最近考えていることなのですが,簡単な問題だってできない子はそれでもひぃひぃ言って問題を解いていますが,できる子は気が抜けた感じになって周りの子にいちょっかいを出すか寝てしまいます。寝ていてくれた方が授業はスムーズですが,これは精神的に堪えます。本当にダメージがでかいです。生徒が挑みたいと思える課題を与えられていないのだ,と自責心がとめどなく沸き起こって情けなくさえなります。

 もうこういうのをやめよう!好奇心がわく課題をあげよう。本当の良問は難しくてもその中にその領域の基本が必ず入っています。少なくとも私がやる授業ではそんな課題をずっと提供し続けてきました。京大医学部に受かった子が悲鳴を上げるような授業にまでなってしまいましたが,その方が良いようです。誰かは付いてくる。そしてほかの子も引っ張られる。

 マンツーマンの授業ではどうするの?

 方針は変えません。問題が解けなくても,どれだけ苦しんでいても,「なにくそ」と立ち向かう気持ちを養い,好奇心をそそる課題を出し続けます。自分の力より上の課題を出さないと人は自分の力で伸びていきません。

 もちろん,生徒たちにサポートを惜しみません。やる気がある限り絶対に見捨てません。物理的に可能な限り,面倒をみます。

 ご意見やご要望があればお教えいただけると幸いです。

 ONゼミナール代表 化学・物理・数学講師 長田 俊将

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